映画『ひまわり』は1970年公開の映画(イタリア・フランス・ソ連・米国の合作)。1964年のイタリア・ソ連合作の戦争映画『イタリアの勇士たちよ』に引き続き、冷戦時代に西側スタッフがソ連ロケを認められた作品。
キャスト
ソフィア・ローレン(1934-)
イタリアの名女優。代表作に『黒い蘭』(1958年)、『ふたりの女』(1960年)など。
マルチェロ・マストロヤンニ (1924-96)
イタリアの名優。ソフィア・ローレンやフェデリコ・フェリーニ監督との共演が多い。カトリーヌ・ドヌーヴとの間に一女がいる。
代表作に『甘い生活』(1960年。フェリーニ監督)、『イタリア式離婚狂想曲』(1962年)、『8 1/2』(1963年。フェリーニ監督)、『ああ結婚』(1964年。デ・シーカ監督)、『ひまわり』(1970年)、『ジェラシー』(1970年)、『最後の晩餐』(1973年)、『特別な一日』(1978年)、『黒い瞳』(1987年?)。
リュドミラ・サベーリエワ(1942-)
1962年レニングラード・バレエ学校(現ワガノワ・バレエ・アカデミー)を卒業し、レニングラード・キーロフ歌劇場(現マリインスキー劇場)の一員となる。セルゲイ・ボンダルチュク監督*1作『戦争と平和』*2にナターシャ・ロストワ役で出演。演技も初めてであった。
製作
監督:ヴィットリオ・デ・シーカ(1901-74)
代表作に『自転車泥棒』(1948年)、『ミラノの奇蹟』(1951年)、『昨日・今日・明日』(1963年。ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニ主演)、『ああ結婚』(1964年)など。俳優業でも高い評価を受けた。
音楽:ヘンリー・マンシーニ(1924-94)
ジュリアード音楽院出身。
代表作に『ティファニーで朝食を』(1961年。「ムーン・リバー」が有名)、『刑事コロンボ』のテーマ曲など。
印象的な場面
(ジョバンナが列車に乗って去っていったあと新築高層アパートに引っ越したが、食事に手を付けずうわの空で窓の外を見ているアントニオに対し)
マーシャ「あの人のことが忘れられないんでしょう? 会いにいらしてもいいのよ。何も言わないで。ただ私……いつまでも待っています」
(イタリアに戻ったアントニオからの一回目の電話の最後)
アントニオ「そうだね、さよなら、ジョバンナ」
ジョバンナ「はぁ……(数秒の沈黙のあと)さよならアント それじゃ」
(深夜、アントニオがジョバンナの家に訪れ、これまでの経緯を話したあと)
ジョバンナ「礼を言って去ればいいのに。あなたはとどまって、子供まで作った」
アントニオ「あの家しかないと思った。この世の中で頼れるところは」「あの時、俺は、一度死んだんだと思う。そして別人に……。身近に死が迫ると人間というものは変わるんだ。感じ方でさえ。うまく説明できないけど……。あ……彼女といると安らぐことができた。フッ……でもどうやったら君にうまく理解してもらえるんだろうか? ここに来るまでは簡単に説明できると思っていた。戦争は残酷だよ。戦争はなにもかも残酷にする。そうなんだジョバンナ。いや、辛すぎたんだ……。どうしてこんなことに……」
しばらくの沈黙、互いにみつめあう。アントニオの説明に納得できなかったか、あるいは未練を断ち切るためか、ジョバンナが首を振る。「でも……そうだロウソク」と言って立ち上がる。
「やりなおそう」「やりなおすなんてできるはずがないじゃない」
二人は抱き合い、キスをすると赤子の鳴き声が。「赤ん坊がいるの。あなたにも子供がいるのでしょう。子供たちを犠牲にはできない」「その子の名前は?」「アントニオよ」「俺の名前?」「いいえ、聖アントニオよ」
駅の場面。アントニオは乗った列車の階段に無表情で立ち、ジョバンナはホームに立つ。列車が出発する。
感想
- 列車の場面が多い。
- アントニオとマーシャが暮らす町(ウクライナ)に原子力発電所がある。しかもそれを目立たせるようなアングルで撮影されており、これはソ連の要望か。
- カメラワークは少し稚拙に感じる。
- ソフィアのもったいぶった演技、マルチェロの渋みのある表情に対し、リュドミラのおそるおそるの演技が対照的。田舎の素朴さが出ていい。
- アントニオとマーシャはなぜ引っ越しをしたのか